==== Text encoding : UTF-8 ==== “24の練習曲集”第14番 −ストロークI− 24 Etudes #14 “strum (stroke) 1” ○ ソロ・ギター・スタイルにおける、ソフトなストロークを鍛えるための練習曲です。 ○ ギターでストロークする場合、フラット・ピックを使うことが多いですが、ソロ・ギター・スタイルではたいていピックを持たず、爪と指先で行います。 ○ 本楽譜ではTAB譜の下に門(ダウン・ストローク /低音弦側から高音弦側へのストローク)、V(アップ・ ストローク/高音弦側から低音弦側へのストローク)のストローク記号を付記してあります。また、楽譜上に/(スラッシュ)で表記されたストロークによるコードは、直前に弾いたのと同じ音を、フォームを変えないで弾くことを表します。この時スラッシュの高さ(縦方向の位置)は、五線譜ではどの音を、TAB譜ではどの弦を弾くか…を示しています。 ○ 右手は、ダウン・ストロークでは爪を、アップ・ストロークでは爪と指頭の肉を弦に当てます。ちなみに筆者はたいてい、右手中指か人差指でストロークを行っており、また激しいストロークの場合は複数の指を寄せ、1つのピックのようにして弾くこともあります。 ○ メロディと伴奏をストロークで同時に弾く場合、メロディはピッキングして伴奏はストロークする…のではなく、1つのストロークで両方を弾き、ストロークの最高音がメロディになるようにします。メロディの音を、しっかり出すように意識することが大切。逆に、伴奏として記譜してあるストロークは、すべての音がしっかりと出ていなくても、塊としてコードが響いていればOKです。特に[A]2小節目の2拍目以降など、メロディ(ここでは1弦)を伸ばしておきたいところでは、ストロークを1弦に当ててしまわないように注意しましょう。 ○ 不要な弦、特にメロディより高い弦は、音を出さないように消音することが重要です。例えば[A]<カッコ1.3.>2小節目冒頭では、右手は全弦に対してストロークしますが、1弦は2弦を押さえた左手小指などで触れて消音します。また6弦は、左手親指でネックを握り込んで触れておくか、右手親指を6弦に引っ掛けるようにして消音しましょう。 ○ [B]は、1回コード・ストロークした後、ピッキングで伴奏やメロディを弾いていきます。 【音源】BSVD9825a、BSVD9825a_slow(スロー) 【録音日】2014年5月20日 【使用ギター】Yokoyama AR-WH 【使用弦】Wyres CP1456M ---------- Diagram ---------- ダイアグラムについて  この練習曲集では、左手の押さえ方や運指を示したダイアグラムを、五線譜の上に掲示しています。これは、おおまかな進行を含めた運指を記しており、たいていの場合は該当する音符の真上に図示してあります。スペースの都合で位置がずれる場合は、どの部分のダイアグラムか…を点線で示しています。  ダイアグラムでは、左端の○は開放弦、①は左手人差指、②は左手中指、③は左手薬指、④は左手小指、○tは左手親指、○iは右手人差指で押さえることを表しています。また、下の小さな数字はフレット番号です(ちなみに、弾かない弦や消音すべき弦に×は付けていないので、注意して下さい)。  一部のダイアグラム内には、指の動きを示す矢印も付記してあります。複数の矢印がある場合、指数字の上側のものは、下側のものより先に弾くことを表します([1])。ただしこれらの矢印は指の動きだけを示したもの で、図からイメージされる順序と演奏の順番は必ずしも一致していない場合もあるので、注意が必要です。また( )付きで示された音は、弾かないけれども押さえておいたほうがよい音を表しています([2])。  ダイアグラムが記されたタイミングでは弾きませんが、その前に弾いていた音が伸びている場合、押弦して出す音に関しては指数字を記してあります([3])。ただし、開放弦による同様の音に関しては、特に○を付記していません。  また、フォーム・チェンジなどの際に、“移動の軸にできる左手指”や“押さえたままにすると移行が楽になる左手指”がある場合、ダイアグラムどうしの間を線で結んであります。移動の軸にできる指は矢印([4])、押さえたままの指は先端が丸の線([5])で示しています。ダイアグラム の同じ弦に複数の指が書かれている場合、基本的に線の左側のダイアグラムでは動作の最後に押さえた指、右側のダイアグラムでは動作の 最初に押さえる指が、軸になる指(または押さえたままの指)となります。そうではない場合は、線上に指数字を記してあります。たとえば [6] の例 では、Dm7で1弦3フレット・G音を押さえる時にも1弦1フレット・F音を押さえたままにし、それ(と 3 弦)を軸にして Em7 へ移行しています。 ---------- Music score ---------- 譜面について  この練習曲集では、音楽においてメロディが重要であるという観点から、メロディは音符の棒や旗を上向き、伴奏は下向きに表記して、区別して います(ただし、かえって煩雑になる場合、違う分け方をしている場合もあります)。  伴奏は基本的に、次のコード・チェンジまで音を伸ばします。特に押弦して弾く音の場合、“音を出したから OK” とコードの途中で離してしまう のではなく、フォーム・チェンジに支障がない程度にぎりぎりまで押さえておくことが大切です。下記の例の場合、本楽譜では [a] のように記譜して ありますが、実際には[b] のように、同じコードの間は伴奏の音を伸ばしておきます。 fig.a fig.b  例えば次の例[c] の場合、Cの間は5弦3フレット・C音と4弦2フレット・E音を、Gの間は6弦3フレット・G音を、押さえたまま弾いています。逆に言えば、例えば薬指1本だけで5弦3フレット・C音→2 弦3 フレット・D音…と押さえていくと([d])、2弦3フレット・D音を押さえるために 5弦3フレット・C音が途切れることになるので、そのような運指は避けましょう。 fig.c fig.d  [e] のカッコで囲われた伴奏の休符は、記譜の都合によるもので、意図的に音を切るわけではありません。基本的には、その前に弾いた伴奏(特にベース音)などを伸ばしておきます([f] は実際の演奏のイメージ)。譜例の場合、2拍目と4拍目ウラでは、直前の伴奏である3 弦開放・G音は同じ弦でメロディを弾くために止まりますが、ベース音の5弦3フレット・C音(小節前半:C)や 6弦3フレット・G音(小節後半:G)は、押さえたまま伸ばしておきます。 ---------- Mute ---------- 消音について  ソロ・ギター・スタイルにおいて、音の長さをコントロールしたり、必要のない音を出ないように止めることを、筆者は「消音」と呼んでいます。  消音の度合いは、曲中における音の役割…その音がメロディか伴奏か…によっても異なっており、筆者の場合メロディは同時に 1 音しか鳴らないよう、ほぼすべて消音しながら弾いています。これは、筆者が音楽の中で最も重要だと考えるメロディをはっきりと演奏するためで、強弱の付け方とともに演奏上の重要なポイントです。また伴奏に関しては、コードの変わり目で音が残っていると汚くなる場合、意識してその音を止めるようにしています。  消音の具体的な方法は様々で、左手の空いた指や指の腹、付け根などで弦に触れたり、右手の空いた指を弦に乗せたりして行います。筆者は主に右手で消音を行っていて、右手のどの指でどの弦を弾くかを決めており、指を弦に乗せた状態を基本として、音を出したい時だけ指が弦から離れるようにイメージしています。  「イメージ」という言葉を使ったのは、実際にはソロ・ギター・スタイルの場合、伴奏は(次にコードが変わるまで)音を伸ばしたいため、伴奏として使う音は基本的に消音しないからです。そのため、同じ弦…たとえば3弦でも、メロディの流れの中で登場した場合は次のメロディを弾く時に消音しますが、伴奏として弾いた場合は次のメロディを弾く時に消音しない…といったケースも有りえるのです(もちろん、強弱の付け方も異なります)。  消音に特化した練習曲として、この練習曲集には第20番や第21番がありますが、筆者は基本的にほぼ必ず消音を使って演奏するので、他の曲でも筆者の参考演奏をよく聴いて、消音という観点から改めて練習してみるのもよいでしょう。  また、いきなり練習曲での消音が難しいようなら、まずは下記譜例で練習してみて下さい。左手は使わず、あらかじめ右手薬指を1弦、右手中指を2弦、右手人差指を3弦に乗せておき、音を出している弦だけ、弾いた後の指が離れている状態にします(また低音弦は、右手親指を寝かせるように乗せて止めておくと、共鳴を止めることができます)。次の弦を弾くのとできるだけ同時に、前の弦に触れて音を止めるのがポイントです。  ただし、このような消音は、慣れるまでは非常に難しいと思います。無理に全ての音を消音しようとせず、自分が気になるところから少しずつ止めるようにすればよいですし、もし音の重なりがあまり気にならないならば、消音しないでも構いません。