==== Text encoding : UTF-8 ==== ソロ・ギターのための24の練習曲集 24 Etudes for Solo Guitar ---------- 目次 CD収録曲目 p4 序章(ダイアグラムについて/譜面について/消音について) p5 第一章 01 “24の練習曲集”第1番 左手 p14 02 “24の練習曲集”第2番 右手 p18 03 “24の練習曲集”第3番 フォーム・チェンジI p21 04 “24の練習曲集”第4番 フォーム・チェンジII p24 05 “24の練習曲集”第5番 単音I p27 06 “24の練習曲集”第6番 単音II p30 07 “24の練習曲集”第7番 オルタネイト・ベース p33 08 “24の練習曲集”第8番 アルペジオ p36 09 “24の練習曲集”第9番 装飾音I p39 10 “24の練習曲集”第10番 装飾音II p42 第二章 11 “24の練習曲集”第11番 ハーモニクスI p46 12 “24の練習曲集”第12番 ハーモニクスII p49 13 “24の練習曲集”第13番 ストリング・ヒット p52 14 “24の練習曲集”第14番 ストロークI p56 15 “24の練習曲集”第15番 ストロークII p60 16 “24の練習曲集”第16番 打音I p66 17 “24の練習曲集”第17番 打音II p70 18 “24の練習曲集”第18番 打音III p76 19 “24の練習曲集”第19番 ライト・ハンド、レフト・ハンド p80 第三章 20 “24の練習曲集”第20番 消音I p84 21 “24の練習曲集”第21番 消音II p87 22 “24の練習曲集”第22番 リズムI p90 23 “24の練習曲集”第23番 リズムII p94 24 “24の練習曲集”第24番 タッチ p98 ソロ・ギタリストのための演奏用語小辞典 p103 ---------- CD index 01, 25 “24の練習曲集”第1番 左手 ◎ 02, 26 “24の練習曲集”第2番 右手 ○ 03, 27 “24の練習曲集”第3番 フォーム・チェンジⅠ ○ 04, 28 “24の練習曲集”第4番 フォーム・チェンジⅡ ☆ 05, 29 “24の練習曲集”第5番 単音Ⅰ ◎ 06, 30 “24の練習曲集”第6番 単音Ⅱ ☆ 07, 31 “24の練習曲集”第7番 オルタネイト・ベース ○ 08, 32 “24の練習曲集”第8番 アルペジオ ◎ 09, 33 “24の練習曲集”第9番 装飾音Ⅰ ☆ 10, 34 “24の練習曲集”第10番 装飾音Ⅱ ◎ 11, 35 “24の練習曲集”第11番 ハーモニクスⅠ □ 12, 36 “24の練習曲集”第12番 ハーモニクスⅡ □ 13, 37 “24の練習曲集”第13番 ストリング・ヒット ◎ 14, 38 “24の練習曲集”第14番 ストロークⅠ □ 15, 39 “24の練習曲集”第15番 ストロークⅡ ◎ 16, 40 “24の練習曲集”第16番 打音Ⅰ ◎ 17, 41 “24の練習曲集”第17番 打音Ⅱ ○ 18, 42 “24の練習曲集”第18番 打音Ⅲ ○ 19, 43 “24の練習曲集”第19番 ライト・ハンド、レフト・ハンド ◎ 20, 44 “24の練習曲集”第20番 消音Ⅰ ☆ 21, 45 “24の練習曲集”第21番 消音Ⅱ □ 22, 46 “24の練習曲集”第22番 リズムⅠ ◎ 23, 47 “24の練習曲集”第23番 リズムⅡ □ 24, 48 “24の練習曲集”第24番 タッチ □ 49 消音しない例(“24の練習曲集”第20番、F.O.) ◎ 使用ギター: ◎ = Morris S-131M ○ = Morris S-121SP ☆ = History NT501M □ = Yokoyama ARWH 序章 ---------- ダイアグラムについて(p6)  この練習曲集では、左手の押さえ方や運指を示したダイアグラムを、五線譜の上に掲示しています。これは、おおまかな進行を含めた運指を記しており、たいていの場合は該当する音符の真上に図示してあります。スペースの都合で位置がずれる場合は、どの部分のダイアグラムか…を点線で示しています。  ダイアグラムでは、左端の○は開放弦、①は左手人差指、②は左手中指、③は左手薬指、④は左手小指、○tは左手親指、○iは右手人差指で押さえることを表しています。また、下の小さな数字はフレット番号です(ちなみに、弾かない弦や消音すべき弦に×は付けていないので、注意して下さい)。  一部のダイアグラム内には、指の動きを示す矢印も付記してあります。複数の矢印がある場合、指数字の上側のものは、下側のものより先に弾くことを表します([1])。ただしこれらの矢印は指の動きだけを示したもの で、図からイメージされる順序と演奏の順番は必ずしも一致していない場合もあるので、注意が必要です。また( )付きで示された音は、弾かないけれども押さえておいたほうがよい音を表しています([2])。  ダイアグラムが記されたタイミングでは弾きませんが、その前に弾いていた音が伸びている場合、押弦して出す音に関しては指数字を記してあります([3])。ただし、開放弦による同様の音に関しては、特に○を付記していません。  また、フォーム・チェンジなどの際に、“移動の軸にできる左手指”や“押さえたままにすると移行が楽になる左手指”がある場合、ダイアグラムどうしの間を線で結んであります。移動の軸にできる指は矢印([4])、押さえたままの指は先端が丸の線([5])で示しています。ダイアグラム の同じ弦に複数の指が書かれている場合、基本的に線の左側のダイアグラムでは動作の最後に押さえた指、右側のダイアグラムでは動作の 最初に押さえる指が、軸になる指(または押さえたままの指)となります。そうではない場合は、線上に指数字を記してあります。たとえば [6] の例 では、Dm7で1弦3フレット・G音を押さえる時にも1弦1フレット・F音を押さえたままにし、それ(と 3 弦)を軸にして Em7 へ移行しています。 ---------- 譜面について(p8)  この練習曲集では、音楽においてメロディが重要であるという観点から、メロディは音符の棒や旗を上向き、伴奏は下向きに表記して、区別して います(ただし、かえって煩雑になる場合、違う分け方をしている場合もあります)。  伴奏は基本的に、次のコード・チェンジまで音を伸ばします。特に押弦して弾く音の場合、“音を出したから OK” とコードの途中で離してしまう のではなく、フォーム・チェンジに支障がない程度にぎりぎりまで押さえておくことが大切です。下記の例の場合、本楽譜では [a] のように記譜して ありますが、実際には[b] のように、同じコードの間は伴奏の音を伸ばしておきます。 fig.a fig.b  例えば次の例[c] の場合、Cの間は5弦3フレット・C音と4弦2フレット・E音を、Gの間は6弦3フレット・G音を、押さえたまま弾いています。逆に言えば、例えば薬指1本だけで5弦3フレット・C音→2 弦3 フレット・D音…と押さえていくと([d])、2弦3フレット・D音を押さえるために 5弦3フレット・C音が途切れることになるので、そのような運指は避けましょう。 fig.c fig.d  [e] のカッコで囲われた伴奏の休符は、記譜の都合によるもので、意図的に音を切るわけではありません。基本的には、その前に弾いた伴奏(特にベース音)などを伸ばしておきます([f] は実際の演奏のイメージ)。譜例の場合、2拍目と4拍目ウラでは、直前の伴奏である3 弦開放・G音は同じ弦でメロディを弾くために止まりますが、ベース音の5弦3フレット・C音(小節前半:C)や 6弦3フレット・G音(小節後半:G)は、押さえたまま伸ばしておきます。 ---------- 消音について(p10)  ソロ・ギター・スタイルにおいて、音の長さをコントロールしたり、必要のない音を出ないように止めることを、筆者は「消音」と呼んでいます。  消音の度合いは、曲中における音の役割…その音がメロディか伴奏か…によっても異なっており、筆者の場合メロディは同時に 1 音しか鳴らないよう、ほぼすべて消音しながら弾いています。これは、筆者が音楽の中で最も重要だと考えるメロディをはっきりと演奏するためで、強弱の付け方とともに演奏上の重要なポイントです。また伴奏に関しては、コードの変わり目で音が残っていると汚くなる場合、意識してその音を止めるようにしています。  消音の具体的な方法は様々で、左手の空いた指や指の腹、付け根などで弦に触れたり、右手の空いた指を弦に乗せたりして行います。筆者は主に右手で消音を行っていて、右手のどの指でどの弦を弾くかを決めており、指を弦に乗せた状態を基本として、音を出したい時だけ指が弦から離れるようにイメージしています。  「イメージ」という言葉を使ったのは、実際にはソロ・ギター・スタイルの場合、伴奏は(次にコードが変わるまで)音を伸ばしたいため、伴奏として使う音は基本的に消音しないからです。そのため、同じ弦…たとえば3弦でも、メロディの流れの中で登場した場合は次のメロディを弾く時に消音しますが、伴奏として弾いた場合は次のメロディを弾く時に消音しない…といったケースも有りえるのです(もちろん、強弱の付け方も異なります)。  消音に特化した練習曲として、この練習曲集には第20番や第21番がありますが、筆者は基本的にほぼ必ず消音を使って演奏するので、他の曲でも筆者の参考演奏をよく聴いて、消音という観点から改めて練習してみるのもよいでしょう。  また、いきなり練習曲での消音が難しいようなら、まずは下記譜例で練習してみて下さい。左手は使わず、あらかじめ右手薬指を1弦、右手中指を2弦、右手人差指を3弦に乗せておき、音を出している弦だけ、弾いた後の指が離れている状態にします(また低音弦は、右手親指を寝かせるように乗せて止めておくと、共鳴を止めることができます)。次の弦を弾くのとできるだけ同時に、前の弦に触れて音を止めるのがポイントです。  ただし、このような消音は、慣れるまでは非常に難しいと思います。無理に全ての音を消音しようとせず、自分が気になるところから少しずつ止めるようにすればよいですし、もし音の重なりがあまり気にならないならば、消音しないでも構いません。 第一章 基礎技術のための練習曲 ---------- “24の練習曲集”第1番 左手(p14) ○ 左手の運指を鍛えるための練習曲です。 ○ 押弦は、左手自体の無駄な移動をできるだけ省き、なおかつ指の移動がスムーズになるような運指を考え、心がけることが重要です。そのためにも、曲を弾く際は、押弦の指使いをしっかり決めておくほうがよいでしょう。 ○ [Intro]1〜4小節目は、同じフォームを並行移動させて押弦します。また、ここや[A]1、3小節目は指2本だけで押さえることができるので、ダイアグラム譜に書かれた指(左手中指+薬指)だけでなく、人差指+中指や、中指+小指、薬指+小指など、別の指…特に苦手な指を使って運指の練習をしてみるとよいでしょう(次ページは[A]を、主に薬指+小指で押弦した例です)。 ○ [A]<カッコ1>3〜4小節目(D7→G(onD)→Gm(onD)→D)は、小節の最初に弾いた4弦開放・D音を、ベース音としてずっと伸ばしておきます(そのためコード・ネームも、D音をベース音として記譜してあります)。続く<カッコ2>の3〜4小節目も同様です。 ---------- “24の練習曲集”第2番 右手(p18) ○ 右手のピッキングを鍛えるための練習曲です。複数の弦を使ってメロディを弾く場合、できるだけ音質や音量にムラが出ないように注意し、また伴奏との差別化を心がける必要があります。 ○ [A]のメロディは、弦を跳躍しています。すべてを1本の右手指で弾いても構いませんが、苦手な指を強化する方法として、例えば右手人差指と中指、人差指と薬指、中指と薬指を交互に使う、苦手な1本の指だけを使う…など、いろいろな指を使ってピッキングしてみるとよいでしょう。 ○ ただし筆者は、[A]のメロディを消音しながら弾いていますので、右手は弦に対して担当の指を決め、3弦を人差指、2弦を中指、1弦を薬指でピッキングしています。 ○ [B]1〜3小節目では、離れた2本の弦を同時にピッキングします。ここでは消音をせず、わざと隣同士の弦の音が重なるようにして、弾いています。押弦した左手は、隣の弦に誤って触れないよう注意しましょう。 ---------- “24の練習曲集”第3番 フォーム・チェンジI(p21) ○ 左手のフォーム・チェンジを鍛えるための練習曲です。左手を移動させながら演奏する構造なので、できるだけスムーズにフォーム・チェンジするよう心がけるとよいでしょう。 ○ 左手を移動させる時は、前後のコード・フォームにおいて弦に対し共通の指があれば、それを軸にしていきます(例えば[A]1小節目のFから2小節目のEmへは、2弦を押さえた左手小指を軸にします)。 ○ ソロ・ギター・スタイルでは、一般的なロー・ポジションのコード・フォームとは違う形の左手フォームが頻出します。この練習曲では、それぞれ下記のようなフォームが元になっているので、コード・フォームから運指を考える場合は参考にして下さい。ただし、コード・ネームからフォームをイメージしていない場合は、気にしないで構いません。 コードは「どのような音を重ねて出来ているか」が大切であり、「どのような形をしているか」によって決まるわけではありませんので、あくまで参考程度に。 F([A]1小節目後半) ロー・ポジションのDと相似形(3フレットが0フレットに相当) Em([A]2小節目前半) ロー・ポジションのAmと相似形(セーハが0フレットに相当) Am([A]2小節目後半) ロー・ポジションのEmと相似形(セーハが0フレットに相当) Em7([B]3小節目) ロー・ポジションのAm7と相似形(セーハが0フレットに相当) Dm7([B]1小節目) ロー・ポジションのAm7と相似形(セーハが0フレットに相当) F(on A)([B]8小節目前半) ロー・ポジションのCと相似形(セーハが0フレットに相当) ---------- “24の練習曲集”第4番 フォーム・チェンジII(p24) ○ “24の練習曲集”第3番と同様に、左手のフォーム・チェンジを鍛えるための練習曲です。第3番に比べてやや難易度が上がり、左手の長距離移動が多く、小指を多用しています。また、左手を大きく開くフォームも出てきます。 ○ 左手の移動時に、前後のフォームにおいて弦に対し共通の指があればそれを軸にできるのですが、そんな「共通の指」が無い場合は、実際に移動する少し前に、あらかじめ視線を移動先に移しておくとよいでしょう。[A]1小節目前半から後半への移動を例に取ると、左手は4音目(1弦2フレット・F#音)までロー・ポジションから大きく移動しないので、2〜3音目あたりで次の移動先である7フレットあたりに視線を移しておきます。 ○ コード・チェンジのタイミングではないところでフォーム・チェンジする場合もあります。[A]<カッコ2.4.> 4小節目Gの3音目である1弦7フレット・B音は、直前の8フレット・C音を左手中指で押さえていますので、左手を移動せずに押さえるとしたら人差指がよさそうに思えますが、そうすると次のEのフォームを押さえるのが難しくなってしまいます。そのため、8フレットから7フレットに移動するタイミング(コードとしてはGの最中)で、次のEのことを考え、7フレットを左手薬指で押さえる方が良い、ということになるのです。 ---------- “24の練習曲集”第5番 単音I(p27) ○ ソロ・ギター・スタイルにおける単音フレーズを鍛えるための練習曲です。 ○ ソロ・ギター・スタイルの場合、伴奏を弾きながらメロディを弾く必要がありますので、伴奏を早めに止めてしまわないように注意しましょう。例えば[A]5小節目後半のように、ベース音などの伴奏に押弦が必要な場合は、メロディを弾いていく間に離さないことが大切です(ここでは次のコードの直前で左手を離して、フォーム・チェンジに備えています)。 ○ 単音のフレーズには、開放弦を挟み込んであります(開放弦を弾いている間に、左手を移動させるため)。ただし、押弦した音と開放弦の音質の違いが気になるようでしたら、開放弦で記譜してある音も、押さえて弾くようにポジションを変えてみるとよいでしょう。 ---------- “24の練習曲集”第6番 単音II(p30) ○ “24の練習曲集”第5番と同様、ソロ・ギター・スタイルにおける単音のフレーズを鍛えるための練習曲。第5番よりもセーハやストレッチが多くなり、押弦側(左手)の難易度が上がっています。 ○ [A]5小節目前半のF#mに関して、ダイアグラムには4〜6弦9フレットを左手薬指で部分セーハするように記してありますが、難しい場合は5弦9フレット・F#音を左手薬指の指頭で押さえ、続く6弦9フレット・B音はその薬指を移動させて、やはり指頭で押弦するとよいでしょう。[A]<カッコ2>4小節目のF#mも同様です。 ---------- “24の練習曲集”第7番 オルタネイト・ベース(p33) ○ オルタネイト・ベースのための練習曲です。「オルタネイト」というのは「交互に」とか「互い違いに」という意味で、6弦と4弦、5弦と4弦…のように、複数の弦を交互に弾くベース音がこのスタイルの特徴です。ここでは、右手親指の規則的な動きを練習していきます。 ○ 筆者は消音のため、弦をどの右手指で弾くか…を決めているので、3弦は通常右手人差指で弾いており、[B]1小節目(Cmaj7)1拍目ウラのメロディ:3弦8フレット・D#音も右手人差指で弾いています。ですが、直後の3弦開放・G音はオルタネイト・ベースのベース音(伴奏)ですので、右手親指が「交互に」違う弦を弾くようにするため、親指で弾いています。同様に、同じ小節4拍目の伴奏:3弦開放・G音も親指で弾き、直後の3弦7フレット・D音は(伴奏ではないので)人差指で弾いています。 ○ オルタネイト・ベースというと、たいていの場合はリズムがシャッフルしますが、この練習曲はそうではありません。楽譜のとおりオモテの拍とウラ拍が同じ長さになるように弾きます(これを、シャッフルに対してイーブンと言います)。 ---------- “24の練習曲集”第8番 アルペジオ(p36) ○ アルペジオとクイック・アルペジオのための練習曲です。 ○ アルペジオは、コードを演奏する際に、同時に複数ではなく1音(あるいは2音)ずつ弾く奏法です。 ○ ソロ・ギター・スタイルでは、伴奏がメロディと同じ(又は高い)音域に来たり、メロディより高い弦に来ることがあります([B]3小節目など)。メロディと伴奏のバランスはとても重要なので、こういった場合は伴奏を弱く柔らかく弾き、メロディとの差別化を心がけるとよいでしょう。 ○ クイック・アルペジオは、2本以上の弦を同時にピッキングする時に、低音弦側(弾く指で言うと右手親指側)から少しだけ時間差を付けて、弦を1本ずつ弾く奏法です。楽譜上では、音符の左側に付いた波線で表されます。低音弦側(親指)をほんの少し早く弾いて、高音弦側がだいたい拍ちょうどのタイミングに来るように弾くとよいでしょう。 ○ [A]<カッコ2.>の1小節目とCoda1小節目は、演奏する音自体は同じですが、次の小節でのフォームが違うため、最後の音を押さえる指が異なっています。 ---------- “24の練習曲集”第9番 装飾音I(p39) ○ ギター演奏でよく用いられる装飾音のうち、ハンマリング・オン、プリング・オフ、スライド、ビブラートを使った練習曲です。 ○ ハンマリング・オン(h.。略してハンマリングとも呼びます)は、右手でピッキングした後 、 左手指で弦を押さえて、 音を高く変化させる奏法です。言葉通りハンマーで叩くようなイメージで、指板に対して垂直に叩くようにして左手指で弦を押さえ、その時点でピッキングはせずに、左手だけで音を出します。 ○ プリング・オフ(p.。略してプリングとも)は、右手でピッキングした後に弦を押さえた左手指を引っ掛け、はじくように離すことで、 音を低く変化させる奏法です。高音弦側と低音弦側のどちらにはじいても構いませんが、隣の弦に触って不要な音が鳴ってしまうようでしたら、使っていない弦の方向にはじき、その弦を消音しておくとよいでしょう。例えば[A]7小節目中、1つ目のプリング(2弦3フレット・D音→1フレット・C音)は、1弦を消音して高音弦側にはじくか、3弦を消音して低音弦側にはじきます(この場合はどちらでも構いません)。 ○ スライド(s.)は、左手指を押弦したままフレット移動させて、音の高さを変える奏法です。 ○ ハンマリング・オン、プリング・オフ、スライドのいずれも、出発点の音は右手でピッキングしますが、到着点の音はピッキングせずに、左手の動作だけで音を出します。 ○ ビブラート(vib.)には、押弦した左手指を弦に対して垂直に揺らすロック・ビブラートや、水平に揺らすクラシック・ビブラートなどがあります。この曲でのビブラート([B]1、5小節目)は、伴奏で弾く隣の弦に触らないようにしたいので、クラシック・ビブラートのほうが向いていると言えます。 ---------- “24の練習曲集”第10番 装飾音II(p42) ○ ギター演奏でよく用いられる装飾音のうち、チョーキングとナチュラル・ハーモニクスを使った練習曲です。 ○ チョーキング(cho.)は、なめらかに音高を変化させる、 ギター特有の奏法のひとつです。 ピッキングした後 、 押弦した左手を押し上げ(あるいは引き下げ)、 音高を上げます。ダイアグラムでは左手薬指1本で押さえるように書いてありますが、実際には人差指と中指を添えて行うとよいでしょう。例えば[A]1小節目の場合は、左手薬指で2弦の7フレットを押さえ、左手中指で同じ弦の6フレット、左手人差指で5フレットを押さえて、3本の指の力でチョーキングします。 ○ チョーク・ダウン(d.)は、直前のチョーキングから普通の状態に戻す(音を下げる)ことを表します。また、チョーク・アップ(U)は、音を出さずにあらかじめチョーキングして、そこから弾き始めることを表します(Coda1小節目)。 ○ ハーモニクスは、独特の澄んだ音による奏法です。ハーモニクス・ポイントと呼ばれる特定のポジション(弦の1/2、1/3などの場所)に触れながら弾くことにより特定の倍音を強調するもので、そのうち開放弦を使ったハーモニクスをナチュラル・ハーモニクスと呼びます。五線譜上では菱形の符頭、TAB譜では菱形で囲われた数字で表されることが多く、さらに「harm.」などと付記されるか、 または「harm.12」のように触れるフレット番号が表記される場合もあります。 ○ [B]のメロディはすべてナチュラル・ハーモニクスで弾きます。左手でハーモニクス・ポイントに触れて、右手でピッキングします。 ○ [B]五線譜の「harm.」の後にある「(8va)」は、記された音符よりも1オクターブ高い音を弾くという意味です。左手の位置が変わるわけではないので、TAB譜だけを読んでいる場合は、無視して構いません。 第二章 特殊奏法のための練習曲 ---------- “24の練習曲集”第11番 ハーモニクスI(p46) ○ 人工ハーモニクス及びストローク・ハーモニクスを鍛えるための練習曲です。 ○ 人工ハーモニクスは、左手で押弦しながら右手でハーモニクス・ポイントに触れつつ弾く奏法で、自由な音高のハーモニクスを弾くことができます。この場合、ハーモニクス・ポイントは、左手で押さえたポジション(TAB譜では菱形で囲ったハーモニクス・ポイントの左側に付記)から数えて12フレット上などになります。左手は押弦に使うため、右手人差指でハーモニクス・ポイントに触れ、同じく右手の親指か薬指で弦をはじいて、ハーモニクスを出します。ハーモニクスと同時に低音弦側の実音を弾く場合は、右手親指で実音を弾きつつ右手薬指でハーモニクスをピッキングします([A]2小節目など)。 ○ [B]1、3、5小節目は、ハーモニクスには左手の押弦を使わず、右手が触れるポジションを移動させることで、音の高さを変えています。 ○ [B]7〜8小節目後半などは、ストロークによるハーモニクスです。右手人差指を使い、複数の弦をセーハするような形で弦に触れて、手は動かさずに右手薬指でストロークします。あるいは、ストロークする薬指に合わせて右手人差指を少し移動(低音弦側→高音弦側)させてもよいでしょう。曲最後のGも同様で、押弦したポジションの12フレット上を右手人差指で触れながら、右手薬指でストロークします。 ---------- “24の練習曲集”第12番 ハーモニクスII(p49) ○ ハーモニクスと実音のコンビネーションを鍛えるための練習曲です。 ○ 左手は押弦に使っていますので、ハーモニクスはすべて右手人差指でポイントに触れてピッキングします。ハーモニクス前後に高音弦側の実音を弾く場合は、右手薬指で実音を弾きつつ、右手親指でハーモニクスをピッキングします([Intro]など)。 ○ 実音とハーモニクスを続けて弾かなければならないので、右手は通常の位置ではなく、ハーモニクスをしやすい位置…すなわち、右手人差指がハーモニクス・ポイントに触れやすい位置にスタンバイし、実音もそのあたりでピッキングします。 ○ [A]5小節目のハーモニクスは、ハーモニクス・ポイントが24フレットになります。ただし、たいていのギターには24フレットがないので、あらかじめ24フレットあたりでハーモニクス・ポイントを探しておいて、ギターのボディや装飾でだいたいの場所を記憶し、そこを狙って触れるとよいでしょう。 ---------- “24の練習曲集”第13番 ストリング・ヒット(p52) ○ ストリング・ヒットを鍛えるための練習曲です。 ○ ストリング・ヒットは、右手指の指頭で弦を叩き、そのまま弦に指を乗せることによって、音を止めると同時に打音を出す奏法です(楽譜では×印の符頭で表しています)。 たいていは次のピッキングの準備を兼ねているので、基本的には次に弾く弦を叩き、続いてその指で引っかけるように弦をピッキングします。TAB譜では叩く弦を示してあるので、参考にして下さい。 ○ 右手親指でストリング・ヒットを行う場合、次に同じ弦をピッキングしやすいよう、親指は横あるいは上を向けるとよいでしょう。 ○ [Intro]1〜3小節目途中までは、5弦を叩いています。次のピッキングの準備のためには、右手親指の指頭が5弦に位置するように叩けばよいので、その際に6弦も一緒に叩いて構いません(そのほうが、打音自体を大きくすることができます)。 ---------- “24の練習曲集”第14番 ストロークI(p56) ○ ソロ・ギター・スタイルにおける、ソフトなストロークを鍛えるための練習曲です。 ○ ギターでストロークする場合、フラット・ピックを使うことが多いですが、ソロ・ギター・スタイルではたいていピックを持たず、爪と指先で行います。 ○ 本書では、TAB譜の下に「門」(ダウン・ストローク /低音弦側から高音弦側へのストローク)、「V』(アップ・ ストローク/高音弦側から低音弦側へのストローク)のストローク記号を付記してあります。また、楽譜上に (スラッシュ)で表記されたストロークによるコードは、直前に弾いたのと同じ音を、フォームを変えないで弾くことを表します。この時スラッシュの高さ(縦方向の位置)は、五線譜ではどの音を、TAB譜ではどの弦を弾くか…を示しています。 ○ 右手は、ダウン・ストロークでは爪を、アップ・ストロークでは爪と指頭の肉を弦に当てます。ちなみに筆者はたいてい、右手中指か人差指でストロークを行っており、また激しいストロークの場合は複数の指を寄せ、1つのピックのようにして弾くこともあります。 ○ メロディと伴奏をストロークで同時に弾く場合、メロディはピッキングして伴奏はストロークする…のではなく、1つのストロークで両方を弾き、ストロークの最高音がメロディになるようにします。メロディの音を、しっかり出すように意識することが大切。逆に、伴奏として記譜してあるストロークは、すべての音がしっかりと出ていなくても、塊としてコードが響いていればOKです。特に[A]2小節目の2拍目以降など、メロディ(ここでは1弦)を伸ばしておきたいところでは、ストロークを1弦に当ててしまわないように注意しましょう。 ○ 不要な弦、特にメロディより高い弦は、音を出さないように消音することが重要です。例えば[A]<カッコ1.3.>2小節目冒頭では、右手は全弦に対してストロークしますが、1弦は2弦を押さえた左手小指などで触れて消音します。また6弦は、左手親指でネックを握り込んで触れておくか、右手親指を6弦に引っ掛けるようにして消音しましょう。 ○ [B]は、1回コード・ストロークした後、ピッキングで伴奏やメロディを弾いていきます。 ---------- “24の練習曲集”第15番 ストロークII(p60) ○ “24の練習曲集”第14番と同様に、ソロ・ギター・スタイルにおけるストロークを鍛えるための練習曲です。こちらは第14番よりもアップ・テンポで、激しいストロークになっています。 ○ 激しいストロークは、右手首の位置を固定気味にして、グーとパーを繰り返すようなイメージで行います。グーとパーといっても、動作をスムーズに繰り返す必要から、グーは緩く握る程度に。パーは完全に手のひらを開くのではなく、パーに行く途中くらい…主にストロークで使う指(右手中指、薬指など)が1弦を越えたあたり…で、開くのを止めてOKです。 ○ 縦長のXは、ブラッシング(ミュート・カッティング)です。押弦した左手を緩めるか、押弦に使っていない左手小指などで全弦に触れるなどして音を詰まらせ、ストロークします。 ○ ラスゲアドは、フラメンコで使われる奏法のひとつです。ストローク時に右手小指から人差指へ少しだけ時間差をつけて“ジャラララーン”とダウン・ストロークする弾き方で、楽譜では矢印の付いた波線と「Ras.」で表しています。 ○ ストローク時に途中の弦を弾かないよう記譜してある場合は、他の弦を押さえた左手指で触れて消音しましょう。例えば[C]4小節目は、6弦を押さえた左手人差指で5弦に触れ、音が出ないようにしておきます。 ○ [B]1〜2小節目は6弦と4弦の音を出さないように注意しましょう。6弦は右手親指を乗せるか、5弦を押さえた左手人差指の指頭で触れて、消音します。そして4弦は、5弦を押さえた左手人差指の腹で触れて、消音します。 ○ また[B]1〜2小節目は、練習のためにわざと左手を開くフォームにしてありますが、届かない場合は次の譜例のように弾いてもよいでしょう。2つありますが、どちらでも構いません。また、2つ目の譜例では4〜6弦10フレットを部分セーハするように記してありますが、部分セーハが難しい場合は、4弦10フレット・C音を左手中指、6弦10フレット・C音を左手人差指で個別に押さえ、5弦は6弦を押さえた左手人差指で触れて消音するようにしてもよいでしょう。 ---------- “24の練習曲集”第16番 打音I(p66) ○ ソロ・ギター・スタイルにおける打音系特殊奏法のうち、スラムを鍛えるための練習曲です。 ○ スラム( )は、右手指を使って、指板のサウンドホール端あたりで弦を叩き、音を止めると同時に打音を出す奏法です。ストロークの流れの中で行われ、たいてい次はそのまま指を弦に引っ掛けるようにしてアップ・ストロークします。[A]のスラムは4〜6弦のみに対して行い、[B]<カッコ1>2小節目のスラムは全弦に対して行っています。 ○ レフト・ハンド(L.H.)は、左手を使って音を出す奏法の総称です。ここでのレフト・ハンド(縦長の□。[A]<カッコ1.3.>3小節目)は、左手で弦を叩きそのまま触れておくことで、音を止めると同時に打音を出します。 ○ [B]1小節目後半のブラッシングは、1本の弦に対してだけ行います。例えば3拍目では5弦以外の弦を消音し、ブラッシング時にはその5弦もミュートして4〜6弦あたりをストロークします。そして、次の5弦5フレット・D音を弾く時点で、5弦のミュートを外します(他の弦は消音したままです)。 ---------- “24の練習曲集”第17番 打音II(p70) ○ ソロ・ギター・スタイルにおける打音系特殊奏法のうち、ボディ・ヒットやタッピング・ハーモニクスを鍛えるための練習曲です。 ○ ボディ・ヒット(五線譜とTAB譜の欄外上下に記された×)は、ギターのボディを叩いて打音を出す奏法の総称です(本来はパームもこれに含まれます)。記譜には特に決まりがありませんが、本書ではTAB譜を、構えたギターを見下ろした状態に見立てており、TAB譜の上側にあるものはサウンドホールの下側、TAB譜の下側にあるものはサウンドホールの上側を叩くことを示しています(五線譜は、TAB譜に準じています)。 ○ 叩く場所にも特に決まりはありませんが、この練習曲では下図のように叩いています。 fig [1]は右手中指〜薬指の指先で叩きます。[2]は左手薬指の先、[3]は左手人差指の先で、 左手でネックの下からギターのカッタウェイ部分を支えるようにして叩きます(カッタウェイ・タイプのギターではない場合も同様)。[4]は右手親指の側面で叩きます。[5]はパームです(次項参照)。 ○ パーム(音符の下に付いた+)は、右手の手首でギターのボディ(サウンドホールの上あたり)を叩き、低い打音を出す奏法です。ダウン・ストロークと同時に行うこともあります。 ○ TAB譜の符尾(音符の棒の先)に×が付いている音はスラップで、右手親指の側面で弦を叩いて、打音と同時に弦の音も出します。ストリング・ヒットと異なり、親指の先を下向きにして叩きます。また、右手は弦に触れたままにせず、離します。動作としては、ギターの表板に対して右手を振り下ろすのではなく、手首を固定し、ドアノブを回すように手を回転させて叩きます。[A]<カッコ2.4.>3小節目などのように単音の場合は、複数の弦を叩きつつ、不要な音が出ないように音を出したい弦の隣の弦を左手で消音しておきます。和音の場合はパームを伴うことが多く、パームで叩いた勢いを使って右手親指を弦に当てています(この場合のパームは、手首の親指寄りで叩くことになります)。 ○ タッピング・ハーモニクス(t.harm.)は、ハーモニクス・ポイントを右手で叩いてハーモニクスを出す奏法です。単音のタッピング・ハーモニクスは、右手人差指などの指頭でハーモニクス・ポイントを叩いて出します(曲冒頭の[Intro]前など)。和音のタッピング・ハーモニクスは、右手人差指や中指などの指の正面を複数の弦に当てて出します。TAB譜では菱形の左外に左手で押さえるポジション、菱形内に右手で叩くポジションを示してあります。また菱形内に数字ではなく斜めの線が書いてある部分([B]1小節目など)は、指板を斜めに叩くことを表していて、叩くポジションの両端を数字で示してあります。理屈としては、左手で押さえたポジションの12フレット上などを右手で叩くのですが、[B]1小節目のCなどのようにコードに対するタッピング・ハーモニクスは、押さえたポジションや開放弦など全弦の12フレット上を正確に叩くのは不可能です。このような場合、高音弦側あるいは開放弦を優先して正確に狙うとよいでしょう(この場合は、1、3弦開放のハーモニクス・ポイントである12フレットを狙います)。また、音を出したくない弦については、押弦した左手指で触れるなどして消音しておきましょう([B]1小節目・Cの6弦や、[B]<カッコ1> 2小節目・Gの1、5弦など)。 ○ 曲最後のタッピング・ハーモニクスにおいて、5フレットを押さえた4〜6弦は、12フレットを叩くと厳密には7フレット・ハーモニクスが鳴りますが、意図としてはG(G音とD音)を出したいので、右手はわざと(フレットに対して)斜めに叩き、4〜6弦のハーモニクス・ポイントを外しています(五線譜には、ハーモニクスではなく実音を表記してあります)。 ---------- “24の練習曲集”第18番 打音III(p76) ○ ソロ・ギター・スタイルにおける打音系特殊奏法のうち、弦を叩く奏法を鍛えるための練習曲です。 ○ スラップ(TAB譜の符尾=音符の棒の先に×)は、“24の練習曲集”の第17番でも出てきましたが、右手親指の側面で弦を叩いて、打音とともに弦の音も出します。また、さらに手首の親指寄りで、ボディも叩いています(パーム)。 ○ [A]の最後と、[B]<カッコ1>の3小節目は、レフト・ハンド・ストローク(L.H.Stroke)とタッピング・ハーモニクスのコンビネーションです。レフト・ハンド・ストロークは、押弦した左手指を、低音弦側から高音弦側に向かってなで下ろすように移動させて、弦をはじく奏法です。左手人差指の付け根あたりを支点にし、弧を描くように指先を動かします。楽譜に書かれたタイミング(この場合4拍目)で動作が終わるようなイメージでなで下ろし、終わると同時に右手で全弦をタッピングして、ハーモニクスを出します。 ○ [A]各小節2拍目のボディ・ヒット(五線譜とTAB譜の欄外上に記された×)は、ギターのボディ(サウンド・ホールの下あたり)を右手中指と薬指で叩いて、打音を出します。 ---------- “24の練習曲集”第19番 ライト・ハンド、レフト・ハンド(p80) ○ ライト・ハンド、レフト・ハンドを鍛えるための練習曲です。 ○ レフト・ハンドは、左手のみで音を出す奏法の総称です。ここでのレフト・ハンド(棒や旗が上向きの音符)は、右手のピッキングを伴わないだけで、動作はハンマリング・オンやプリング・オフと同じです。 ○ ライト・ハンドは、右手のみで音を出す奏法の総称です。ここでのライト・ハンド(棒や旗が下向きの音符)は、動作としては、右手によるハンマリング・オン(押弦)やプリング・オフ(離弦)、スライド(押弦して移動)と言えるでしょう。 ○ [A]2、4、8小節目のグリッサンドは、右手人差指で5、6弦を押さえたままロー・ポジションへ移動します。個別に見ると、[A]2小節目のグリス・ダウンは1〜2フレットあたりまで下がった後、次の3小節目アタマでプリング・オフして、開放弦の音を出します。[A]4小節目では、5フレットへ向かってグリス・ダウンし、プリング・オフせずに一旦さりげなく離して、5小節目アタマで5フレットを押さえます(ハンマリング・オン)。[A]8小節目は2フレットへ向かってグリス・ダウンし、プリングせずにさりげなく離して、[B]1小節目で2フレットを押さえます。 ○ [A]8小節目からCodaへ行く際は、右手は5フレットからグリス・ダウンし、次の小節(Coda)のアタマでプリングします。その時、左手で5〜6弦12フレットに触れておき(右手と左手が交差します)、右手のプリング・オフによってハーモニクスを出します。 ○ Coda後半のハーモニクスは、人工ハーモニクスで弾きます。左手で1〜2弦5フレットを部分セーハし、右手人差指で17フレットに触れながら右手薬指でピッキングします。 第三章 表現力向上のための練習曲 ---------- “24の練習曲集”第20番 消音I(p84) ○ ソロ・ギター・スタイルにおいて、消音を鍛えるための練習曲です。 ○ 筆者は基本的に、メロディは同時に1音しか鳴らないよう、ほぼ全て消音しながら弾いています。また伴奏に関しては、コードの変わり目で音が残っていると汚くなる場合、その音を止めるようにしています。具体的な方法は様々で、左手の空いた指や指の腹、付け根などで弦に触れたり、右手の空いた指を弦に乗せたりして行っています。 ○ [B]1小節目のように、メロディが弦をまたいで下降するような場合は、消音せずにそのまま弾くと単なるアルペジオに聞こえてしまいがちです。右手だけで止めるのが難しければ、左手を使っても構わないので、消音に気をつかいながら弾いてみましょう。 ○ 伴奏は、たいていの場合コード・チェンジがフォーム・チェンジを兼ねていて、コード・チェンジ時にそれまで押さえていたフォームを離すので、特に気にしなくても音が止まることが多いです。しかし[B]<カッコ1>2小節目のベース音のように開放弦でベース音を弾く場合、そのまま弾いていくと音が重なりますので、Am7(onD)の時点で5弦開放・A音は止めるようにしたいところです。筆者は4弦をピッキングする直前に、右手親指の背で5弦に触れて消音しています。 ○ また、[B]<カッコ1>3小節目は、2拍目ウラまで伴奏がメロディのように動いています。このような場合は伴奏でもメロディと考えて、消音しながら弾くとよいでしょう。また3拍目以降は、コードを分散させたフレーズ(アルペジオ)になるので、消音せずに重ねて弾いてOKです。 ---------- “24の練習曲集”第21番 消音II(p87) ○ “24の練習曲集”第20番と同様、ソロ・ギター・スタイルにおいて、消音を鍛えるための練習曲です。第20番と比べて、音を短く切る部分が多くなっています。 ○ チューニング表記の下に記されているとおり、オモテ拍がウラ拍より長い(2:1)、いわゆる「シャッフル」のリズムで演奏します。 ○ 音符の上に付記された点はスタカートで、音を短く切ることを表しています。模範演奏音源を参考に、音の長さのイメージを掴んで下さい。 ○ [B]1〜6小節目は2小節で1ブロックになっていて、最初にコード、次に1弦のメロディ、次に2〜4弦での合いの手フレーズが出てくる構造です。記譜上の都合からコードと合いの手を同じパート(旗や棒が下向きの音符)で記していますが、コード、メロディ、合いの手と、3つのフレーズ全てを重ねるようにして弾きます。例えば1〜2小節目では、3弦1フレット・G#音と6弦開放・E音(コード)を伸ばしつつメロディを弾き、続いてコードとメロディの最後の音(1弦開放・E音)を伸ばしながら、合いの手を弾きます。それぞれ、伸ばしたい音を止めてしまわないように注意しましょう。 ---------- “24の練習曲集”第22番 リズムI(p90) ○ リズム(読譜)を鍛えるための練習曲です。 ○ 曲を楽譜どおりに演奏するためには、まずはじめにその楽譜を正しく読み解くことが、とても大切です。五線譜でもTAB譜でも、リズムや音の長さの表し方はほぼ同じなので、自己流で演奏する前に、きちんと譜読みをする癖を付けましょう。 ○ 楽譜を1小節ごと、1拍ごとに分解して、まずは口でリズムを取ってみましょう(歌ではないので、音の高さは適当で構いません)。その曲で中心になっている音符の最小単位に、ひとつの言葉…「タ」とか「ラ」とか、伸ばしているところは「ア」とか、休んでいるところは「ン」などを当ててみましょう。この練習曲の最小単位は十六分音符なので、下記のようになります(ちなみに、たとえば“24の練習曲集”第1番の最小単位は、八分音符です)。 Staff ex. ○ 上段の例では、「タ」「ァ」を「ター」とひとまとめに読まないこと。下段では「イ」「チ」「ト」「オ」を「イチ」などとまとめないことが大切です。 ○ ちなみに本書では、TAB譜の二分音符・全音符(数字が○で囲われた音符)の上下のズレを除いて、“実際の拍”と“楽譜を見た時の印象”ができるだけ近くなるようにデザインしてあります。 ○ さらに、この練習曲は十六分のシャッフルになっているので(   )、実際にはこのようになります。 Staff ex. ○ 口に出して言うことで、楽譜のリズムが理解できているかどうかが解ります。口では言えるが弾けない、という場合は、頭では理解しているけれど指が付いてきていない状況です。そして口で言えない場合は、リズムを(頭で)理解できていない…ということになるので、きちんと口で言えるように、ゆっくりじっくり、楽譜を読む練習をするとよいでしょう。 ○ 拍のアタマ、特に小節の最初に音が無かったり音が伸びていたりして、右手の“弾く”動作が無いところは、とりわけ拍が取りにくいと思います([A]各小節目の3拍目や、[A]<カッコ2.>の1拍目など)。こういう場合は、頭の中で「ン」や「ア」をしっかり言いながら弾きましょう。 ---------- “24の練習曲集”第23番 リズムII(p94) ○ “24の練習曲集”第22番と同様、リズム(読譜)を鍛えるための練習曲です。 ○ この練習曲は変拍子といって、小節ごとに拍の数が異なる形で書かれています。最初に「C」と書かれた小節([A]1小節目など)は四拍子、「3/4」と書かれた小節は三拍子([A]2小節目、[B]7小節目など)。また、何も書かれていない小節は、ひとつ前の小節と同じ拍子です。例えば[B]2小節目は、1小節目が「C」すなわち四拍子なので、ここも四拍子ということになります。 ○ また、“24の練習曲集”第1番などは小節ごとにコードが変わることもあり、1小節を1つのブロックとしてイメージしやすいですが、この第23番は、たとえば[A]2小節目はアタマでは音を弾きませんし(前の小節の最終音を伸ばしているため)、[B]は小節目の切れ目と関係無くフレーズが続いているように聞こえるでしょう。特に後者の場合は、半端な拍数でも構わないので自分がイメージする「フレーズの切れ目」を楽譜に書き込み、それを自分なりのブロックとして弾いてもよいでしょう(次ページ参照)。 ○ [B]5、6小節目の<カギ3カギ>は「三連符」といって、本来は四分音符が2つ入る長さ(二拍)に3つの音を入れることを表しています。普通の音符では長さを表せないため、このような書き方になっていますので、注意しましょう。 Staff ex. ---------- “24の練習曲集”第24番 タッチ(p98) ○ 右手のタッチ(音量のコントロール)を鍛えるための練習曲です。 ○ イントロの、TAB譜下に記された > はアクセント記号で、その音を強く弾くことを表しています。1〜2小節目と3〜4小節目では、強く弾く音のタイミングが異なるので注意しましょう。 ○ [A]1、3、5、7小節目は、前半(1拍目ウラ〜2拍目ウラ)と後半(3拍目オモテ〜4拍目オモテ)で弾く音は同じなのですが、どこがメロディでどこが伴奏か…が異なっています。ただ弾くだけでは同じフレーズを繰り返しているように聞こえてしまうので、強弱や消音を意識してメロディと伴奏をしっかり区別しましょう。 ○ [B]では、伴奏がメロディより高い弦に来ます。この場合メロディが埋もれてしまいがちなので、どこがメロディか…をきちんと意識することが重要です。楽譜では、音符の旗や棒が上向きのパートがメロディ、下向きが伴奏として表していますが、そのためにかえってやや読みづらくなっているので、別の書き方で記した楽譜を次ページに掲載しておきます(メロディには、アクセント記号を付記してあります)。書式が違いますが演奏内容は同じですので、参考にして下さい。 Staff ex. ソロ・ギタリストのための演奏用語小辞典 ---------- 1(p104) 8va【おったーう゛ぁ・あるた/ottava alta】 五線譜に記された音よりも1オクターブ高い音を弾く。ハーモニクスなどで時々用いられる記号。読み方は「オッターヴァ・アルタ」。 ---------- あ(p104) ア・テンポ【a tempo】変更したテンポを元の速さに戻すことを表す。楽譜上では「a tempo」と表記される。 アポヤンド【apoyando】弦をピッキングした後、隣の弦に寄りかからせることで、指の動きを止める奏法。スペイン語で「寄りかかる」の意。強いピッキングが可能になるため、大きい音を出したい場合に有効。 ↔アルアイレ アルアイレ【al aire】アポヤンドに対し、ピッキング後、隣の弦に寄りかからせずに弾く奏法。スペイン語で「空中へ」の意。 ↔アポヤンド アルペジオ【arpeggio】コードを演奏する際に、同時に複数ではなく1音(あるいは2音)ずつ弾く奏法。 c.f. “24の練習曲集”第8番[p36] 押弦【おうげん】弦を押さえること。「おうげん」と読む。 オープン・チューニング【open tuning】オルタネイト・チューニングの一種で、全弦開放が特定のコードになっているものを指す。オープンG(D↓G↓DGBD↓)、オープンD(D↓ADF♯↓A↓D↓)、オープンC(C↓G↓C↓GC↑E)などがある(矢印はノーマル・チューニングからの変更方向を示す)。 →オルタネイト・チューニング ↔ノーマル・チューニング オルタネイト・チューニング【alternate tuning】ノーマル・チューニングに対し、1本あるいは何本かの弦の音高を変えたチューニングのこと。オルタネイトは「代わりの」「別の」の意。ドロップDチューニング(D↓ADGBE)、ドロップGチューニング(D↓G↓DGBE)、ダブル・ドロップDチューニング(D↓ADGBD↓)や、D↓ADGA↓D↓(そのままアルファベットを読んでDADGAD=ダドガド・チューニングと呼ばれる)、C↓G↓DGBD↓などがある(矢印はノーマル・チューニングからの変更方向を示す)。オルタネイト・チューニングの一種で、全弦開放が特定のコードになっているものを特にオープン・チューニングと呼ぶが、すべてのオルタネイト・チューニングはオープン・チューニングであるとも言えるので(例:DADGADはD(11)(omit3rd)、CGDGBDはCmaj7(9)あるいはG(onC)など)、境界は曖昧である。 →オープン・チューニング、ドロップDチューニング ↔ノーマル・チューニング オルタネイト・ベース【alternate bass】6弦→4弦…や5弦→4弦…のように弦をまたいでベース音を弾く奏法。この場合のオルタネイトは「互い違いに」の意。 ↔モノトニック・ベース c.f. “24の練習曲集”第7番[p33] 音高【おんこう/pitch】音の高さ。「おんこう」と読む。ちなみに、「音の高さ」という意味で「音程」を用いるのは、厳密には誤り。 →音程 音程【おんてい/interval】2つの音と音の隔たり(距離)。1度、3度…など、度数という単位で表す。 →音高 ---------- か(p104) ギャロッピング奏法【ぎゃろっぴんぐそうほう/gallop rhythm】ミュートした低音弦を使って右手親指でオルタネイト・ベースを弾きながら、右手人差指など親指以外の指で、高音弦を使ってメロディを弾く奏法。チェット・アトキンスが発展させたため、「チェット・アトキンス奏法」とも。 クイック・アルペジオ【quick arpeggio】2本以上の弦を同時にピッキングする際、低音弦側(右手親指側)から順に少しだけ時間差を付けて弾く奏法。本書では、音符の左側に付記された波線で表される。 c.f. “24の練習曲集”第8番[p36] グリッサンド【glissando】左手を押弦したまま移動させて、音高を変化させる奏法のひとつ。楽譜上ではスラー記号と、「g.」または「gliss.」などで表される。本書では、開始音と到達音の両方が表記されていて開始音のみピッキングする場合を「スライド」、開始音と到達音の両方が表記されていて両方ともピッキングするか、片方しか表記されていない場合を「グリッサンド」として、区別している。 →スライド コーダ【coda】元々は曲の終結部分の意で、ラテン語の「尾」に由来する。反復記号としてのコーダは、繰り返し時に曲中の「to 」から跳ぶ先のこと。楽譜上では「Coda」と表記される。 →トゥ・コーダ ---------- さ(p105) 人工ハーモニクス【じんこうはーもにくす/artificial harmonics】 ハーモニクスのうち、左手で押弦しながら、右手でハーモニクス・ポイントに触れつつ弾くものを指す。テクニカル・ハーモニクスとも。本書ではTAB譜において、ハーモニクスを表す菱形の左外に左手で押さえるポジションを、また菱形内には右手で触れるポジションを記してある。 →ハーモニクス  c.f.“24の練習曲集”第11番[p46] fig. たとえばCのロー・コードを押さえた場合、それぞれの弦のハーモニクス・ポイントは、押弦したところから12フレット上のポジションになる(図の左は押弦位置、右はハーモニクス・ポジション)。 スタカート【staccato】音を短く切る奏法の総称。スタッカートとも。楽譜上では、音符の上(あるいは下)に付記された点で表される。 c.f. “24の練習曲集”第21番[p87] スタンダード・チューニング【standard tuning】=ノーマル・チューニング スタンブリング・ベース【stumbling bass】ラグタイム・ブルースの奏法のひとつ。20世紀初頭に活躍したラグタイム・ブルース・ギタリストであるブラインド・ブレイクが用いたもので、ステファン・グロスマンが命名(スタンブリングは「つまづく」の意)。本来オモテ拍に来るベース音に関して、その音は直前のウラ拍で弾き、本来のタイミングでは1本高音側の弦を、右手の親指で続けて「(ダ)ダン」と弾く。 ストリング・ヒット【string hit】右手指で弦を叩いて、打音を出す奏法。指はそのまま弦に乗せておき、次のピッキングの準備を兼ねることが多い。本書では、符頭が×印の音符で表される。 c.f. “24の練習曲集”第13番[p52] ストローク【stroke, strum】複数の弦を、右手の一動作で同時に弾く奏法。低音弦側から高音弦側へ弾き下 ろすのをダウン・ストローク、高音弦側から低音弦側へ弾き上げるのをアップ・ストロークという。本書では、TAB譜の下に付記された門(ダウン・ストローク)、V(アップ・ストローク)で表される。また本書では、ストロークを楽譜上において/(スラッシュ)で表記している場合もある。これは直前に弾いたのと同じ音を、フォームを変えないでストロークすることを表している。 ↔ピッキング c.f. “24の練習曲集”第14番[p56]、第15番[p60] ストローク・ハーモニクス【stroke harmonics】ハーモニクスの一種。右手人差指がセーハするような形でハーモニクス・ポイントに触れながら、右手薬指で軽くストロークする。 →ハーモニクス c.f.“24の練習曲集”第11番[p46] スライド【slide】左手を押弦したまま移動させて、音高を変化させる奏法のひとつ。楽譜上では、スラー記号(TAB譜ではタイ記号)と「s.」などで表される。本書では、開始音と到達音の両方が表記されていて開始音のみピッキングする場合を「スライド」とし、開始音と到達音の両方が表記されていて両方ともピッキングするか、片方しか表記されていない場合を「グリッサンド」として、区別している。 →グリッサンド c.f.“24の練習曲集”第9番[p39] スライド・ギター【slide guitar】左手にスライド・バーを持ち(あるいはボトル・ネックを装着し)、行う演奏。ブルースでよく用いられる。楽譜上では「slide bar」と付記されることがある。また逆に、スライド・バーを使用中に指で押弦する場合、音符に「f.」などと付記される。 スラップ【slap】下を向けた右手親指の側面で低音弦を叩き、打音と同時に弦の音を出す奏法。ギターの表板に対して右手を振り下ろすのではなく、手首を固定し、ドアノブを回すように手を回転させて叩く。本書では、TAB譜の符尾(音符の棒の先)に付記された×で表される。 c.f. “24の練習曲集” 第17番[p70]、第18番[p76] スラム【slam】右手指を使って、指板のサウンドホール端あたりで弦を叩き、音を止めると同時に打音を出す奏法。ストロークの流れの中で行われ、たいてい次はそのまま指を弦に引っ掛けるようにしてアップ・ストロークする。全弦に対して行うものだけでなく、一部の弦だけに対して行ったり、右手人差指を指板からはみ出させるようにしてギターのボディを叩き、打音を強化する場合もある。本書では、四角で囲われた縦長のXで表され、叩く弦はTAB譜上における記号の縦位置で示される。 c.f. “24の練習曲集”第16番[p66] スリー・フィンガー【three finger】もともとは右手親指、人差指、中指の3本で弾く奏法(親指はfingerとは呼ばないため、親指に加えて人差指、中指、薬指の3本指…計4本で弾く奏法、とする説も)。転じて、スリー・フィンガーによる特定の伴奏パターン(ツンツクツカツク〜)も指す。 セーニョ【segno】ダル・セーニョで戻る場所を示す目印。セーニョはイタリア語で「印」の意で、楽譜上では「※」と表記される。 →ダル・セーニョ ---------- た(p106) ダ・カーポ【da capo】曲の最初に戻ることを示す演奏記号。イタリア語で「冒頭へ」の意で、楽譜上では「D.C.」と表記される。 →ダル・セーニョ タッピング【tapping】弦を叩いて音を出す奏法。筆者は、叩いてすぐに弦から手を離すもののみをタッピングと定義している。 →タッピング・ハーモニクス タッピング・ハーモニクス【tapping harmonics】ハーモニクスの一種。ハーモニクス・ポイントを右手で叩くことで、ハーモニクスを出す奏法。単音のタッピング・ハーモニクスは、右手人差指などの指頭でハーモニクス・ポイントを叩いて出す。和音のタッピング・ハーモニクスは、右手人差指や中指などの指の正面を複数の弦に当てて出す。本書においては「t.harm.」と付記し、TAB譜にはハーモニクスを表す菱形の左外に左手で押さえるポジション、菱形内に右手で叩くポジションを記してある。そのうち左側の数字(押さえるポジション)だけが記していない弦は、左手で消音するなどして音が鳴らないようにし、右手はその弦も含めて叩く。また、菱形内に数字ではなく斜めの線が書いてあるものは指板を斜めに叩くことを表し、叩くポジションの両端を上下に数字で示してある。 →ハーモニクス c.f. “24の練習曲集”第17番[p70] タバレト【tabaret】フラメンコで用いられる奏法のひとつ。左手で5弦と6弦を7〜12フレットあたりで交差させて、右手でピッキングすることで、小太鼓のような音を出す。楽譜上では「Tabaret」と付記されることもある。 ダル・セーニョ【dal segno】曲中の目印(※:セーニョ)に戻ることを示す演奏記号。楽譜上では「D.S.」と表記される。 →セーニョ、ダ・カーポ チョーキング【bending, choking】なめらかに音高を変化させる、 ギター特有の奏法のひとつ。ピッキングした後 、 押弦した左手を押し上げ(あるいは引き下げ)、 音高を上げる。 楽譜上では、 音符に付記されたスラー記号と「cho.」などで表される。 c.f. “24の練習曲集”第10番[p42] チョーク・アップ【choke up】音を出さずにあらかじめチョーキングしておき、 その状態から弾き始める奏法 。楽譜上では、 音符に付記された「U」などで表される。 →チョーキング c.f. “24の練習曲集”第10番[p42] チョーク・ダウン【choke down】チョーキングから、 普通の状態に戻す(音高を下げる)奏法 。 楽譜上では、音符に付記されたスラー記号と「d.」などで表される。 →チョーキング c.f. “24の練習曲集”第10番[p42] テクニカル・ハーモニクス【technical harmonics】=人工ハーモニクス トゥ・コーダ【to coda】繰り返し時に、コーダへ跳ぶための元位置を示したもの。楽譜上では「to★」と表記される。 →コーダ トリル【trill】異なる高さの2音を素早く連続して弾く奏法。ギターの場合、ハンマリング・オンとプリング・オフの連続で演奏されることが多い。楽譜上では、1つの音符に対し「tr」などと付記されるか、横向きの波線で表される(両者が併用されることも)。本来は示された音符に対して、その音と2度上の音を演奏するが、そうではない場合は装飾音符によって演奏する音が示されることもある。 トレモロ【tremolo】同じ高さの音を素早く連続して弾く奏法。楽譜上では、音符の棒に対し斜めに交わる太い線を複数記す(旗に相当)か、「trem.」と付記されることが多い。 ドロップDチューニング【drop D tuning】オルタネイト・チューニングの一種。ノーマル・チューニングに対し、6弦だけをEからDに下げた(=ドロップした)チューニングのこと。 →オルタネイト・チューニング ↔ノーマル・チューニング ---------- な(p108) ナチュラル・ハーモニクス【natural harmonics】=ハーモニクス ナッシュビル・チューニング【nashville tuning】特殊なチューニングのひとつで、ノーマル・チューニングに比べて3〜6弦を1オクターブ高くしたもの。普通の弦を高くチューニングするわけではなく、3〜6弦にエクストラ・ライトなど細い弦セットの1〜4弦を張ったり、12弦ギターの細い方の弦を張ることで作り出す。 ネイル・アタック【nail attack】右手薬指(または中指)の爪側を弦に当て、硬質な音を出す奏法。 ノイズ【noise】音楽的ではない音を出す奏法の総称。ギターの場合、叩いたり(ボディ・ヒット)、弦を引っ掻いたり(スクラッチ・ノイズ)、弦に異物を挟んだり(プリペアド・ギター)することがある。 ノーマル・チューニング【normal tuning】6弦からEADGBEと調弦するチューニング方法。ギターにおいて一般的なため、ノーマル(=一般)・チューニング、レギュラー(=正規)・チューニング、スタンダード(=標準)・チューニングとも呼ばれる。 →オープン・チューニング、ドロップDチューニング ↔オルタネイト・チューニング ---------- は(p108) パーム【palm】右手の手首でギターのボディ(サウンドホールの上あたり)を叩き、低いボディ・ヒット(打音)を出す奏法。本書では、音符の下に「+」と付記している。 →ボディ・ヒット c.f. “24の練習曲集”第17番[p70] ハーモニクス【harmonics】独特の澄んだ音による奏法。ハーモニクス・ポイントと呼ばれる特定のポジション(弦の1/2、1/3などの場所)に触れながら弾くことで、特定の倍音を強調するもの。特に、開放弦を使ったハーモニクスをナチュラル・ハーモニクスと呼ぶ。五線譜上では菱形の符頭で、TAB譜では菱形で囲われた数字で表され、また「harm.」と付記されるか、あるいは「harm.12」のように触れるフレット番号が表記される場合もある。 →人工ハーモニクス、タッピング・ハーモニクス c.f. “24の練習曲集” 第11番[p46]、第12番[p49] fig. ハーモニクス・ポイントの例。弦長の1/2が12フレット、1/3が7フレットと19フレット、1/4が5フレット。 ハンマリング・オン【hammer on】右手でピッキングした後、左手指で弦を押さえて、音高を高く変化させる奏法。略して「ハンマリング」とも。 楽譜上では、スラー記号(TAB譜ではタイ記号)と「h.」などで表される。 c.f. “24の練習曲集”第9番[p39] ハンマリング・ハーモニクス【hammer on harmonics】ハーモニクスの一種。右手であらかじめハンマリング・オン後におけるハーモニクス・ポイントに触れておき、左手でハンマリング・オンして出す。 →ハーモニクス、ハンマリング・オン ↔プリング・ハーモニクス ピッキング【picking】指1本ずつでそれぞれ1本の弦を弾いて、音を出す奏法。例外的な呼称として、1本の指で複数の弦をピッキングすることを複弦ピッキングという。 ↔ストローク ビブラート【vibrato】左手指で弦を押さえたまま指先を揺らすことで、音高を揺らす奏法。弦に対して垂直に左手指を揺らすロック・ビブラートや、水平に揺らすクラシック・ビブラート、ネックを曲げて行うネック・ビブラート、ボディを揺らすボディ・ビブラートなどがある。楽譜上では、音符の上に付記された「vib.」などで表される。 c.f. “24の練習曲集”第9番[p39] フィーネ【fine】イタリア語で「終わり」の意で、繰り返し時に途中で曲を終了する場合、楽譜に「Fine」と付記して終了位置を示す。 c.f. “24の練習曲集”第4番[p24] フェルマータ【fermata】イタリア語で「止める」の意で、リズムが止まる…すなわち、音を伸ばすことを表す。楽譜上では「 」と表記される。 ブラッシング【brushing, mute cutting】押弦した左手を緩めるか、押弦に使っていない左手小指などで全弦に触れて音を詰まらせ、ストロークする奏法。ミュート・カッティングとも。楽譜上では縦長のXで表される。 →ストローク c.f. “24の練習曲集”第15番[p60] プリング・オフ【pull off】右手でピッキングした後、弦を押さえた左手指を引っ掛けるように離して、音高を低く変化させる奏法。略して「プリング」とも。楽譜上では、スラー記号(TAB譜ではタイ記号)と「p.」などで表される。 →プリング・ハーモニクス c.f. “24の練習曲集”第9番[p39] プリング・ハーモニクス【pull off harmonics】ハーモニクスの一種。右手であらかじめプリング・オフ後におけるハーモニクス・ポイントに触れておき、左手でプリング・オフして出す。 →ハーモニクス、プリング・オフ ↔ハンマリング・ハーモニクス c.f. “24の練習曲集”第19番[p80] 変則チューニング【へんそくちゅーにんぐ】=オルタネイト・チューニング ボディ・ヒット【body hit】ギターのボディを叩いて出す打音の総称。叩く場所は基本的に任意だが、楽譜内、或いは解説などで指定されている場合もある。楽譜上では、×印で表されることが多い。また、パームもボディ・ヒットの一種。 →パーム c.f. “24の練習曲集”第16番[p66] ---------- ま(p109) ミュート【mute】弦に少しだけ触れて弾くことで、音を詰まらせる奏法。右手の小指側の腹〜手のひらあたりで弦に触れる(ブリッジ・ミュート)か、あるいは押弦した左手を緩めたり余った左手指で弦に触れて行う。楽譜上では「mute」などと付記される。 ミュート・カッティング【mute cutting】=ブラッシング モノトニック・ベース【monotonic bass】同じベース音を繰り返しながら弾く奏法。モノトニックは「単調な」の意。 ↔オルタネイト・ベース ---------- ら(p110) ライト・ハンド【right hand】右手だけで音を出す奏法の総称。右手による押弦(ハンマリング・オン)、離弦(プリング・オフ)、押弦したままの移動(スライド/グリッサンド)などの動作がある。楽譜上では、音符に付記された「R.H.」で表されることもある。 →ライト・ハンド・タッピング ↔レフト・ハンド c.f. “24の練習曲集”第19番[p80] ライト・ハンド・タッピング【right hand tapping】右手で弦を叩いてすぐ離し、音を出す奏法。弦を押さえるライト・ハンドと違い、叩いてすぐに離すものを指す。ストロークやピッキングの代用として用いられることも多い。楽譜上では、音符に付記された「R.H.T.」で表されることもある。 →ライト・ハンド ラスゲアド【rasgueado】フラメンコで使われるストロークの一種。ストローク時、右手小指から人差指の順に少しだけ時間差をつけて“ジャラララーン”とダウン・ストロークする。本書では、音符の左側に付記された矢印付きの波線と「Ras.」で表される。 →ストローク c.f. “24の練習曲集”第15番[p60] ラップ・タッピング【rap tapping】エリック・モングレインが用いる奏法。ギターを構えず膝の上に寝かせ、両手の指でピアノのように押弦したり、ストロークやタッピング・ハーモニクスを行うもの。 リタルダンド【ritardando】テンポをだんだん落とすことを示す。イタリア語で「遅らせる」の意。楽譜上では「rit...」と表記される。 リハーサル・マーク【rehearsal letter】曲の何小節かをまとめて1つのかたまりとし、順番にアルファベットを付けたもの。練習番号、セクション記号とも。たいていは四角で囲われたアルファベットで表記され、楽譜の上側に付記される。ポピュラー音楽では前奏を[Intro]、間奏を[Inter]、後奏を[Ending]などとする場合も。 ルバート【rubato】自由なテンポで演奏することを示す。イタリア語で「盗まれた(時間)」の意。楽譜上では「rubato」と表記される。 レギュラー・チューニング【regular tuning】=ノーマル・チューニング レフト・ハンド【left hand】左手だけで音を出す奏法の総称。右手のピッキングを伴わない押弦(ハンマリング・オン)、離弦(プリング・オフ)、押弦したままの移動(スライド/グリッサンド)などの動作がある。楽譜上では、音符に付記された「L.H.」で表されることもある。また、左手で弦を叩いて押さえることで、音を止めると同時に打音を出す奏法もレフト・ハンドと呼び、楽譜では縦長の□と、それに付記された「L.H.」で表されることがある。 →レフト・ハンド・ストローク、レフト・ハンド・タッピング ↔ライト・ハンド c.f. “24の練習曲集”第16番[p66]、第19番[p80] レフト・ハンド・ストローク【left hand stroke】レフト・ハンドの一種。押弦した左手指を、低音弦から高音弦側に向かってなで下ろすように移動させ、弦をはじく奏法。左手人差指の付け根あたりを支点にし、弧を描くように指先を動かす。次に記された音符のタイミングが終着点になるように、実際には少し前から開始する。タッピング・ハーモニクスと組み合わされることもあり、その場合はタッピング・ハーモニクスのタイミングでレフト・ハンド・ストロークの動作が終わるようなイメージでなで下ろし、終わると同時に右手でタッピングしてハーモニクスを出す。 →レフト・ハンド c.f. “24の練習曲集”第18番[p76] レフト・ハンド・タッピング【left hand tapping】左手で弦を叩いてすぐ離し、音を出す奏法。弦を押さえるレフト・ハンドと違い、叩いてすぐに離すものを指す。楽譜上では、音符に付記された「L.H.T.」で表されることもある。 →レフト・ハンド 南澤大介 Daisuke Minamizawa  高校時代にギターの弾き語りをはじめ、のちソロ・ギター・スタイルの音楽に傾倒。TVドラマ「愛という名のもとに(1992)」サウンドトラック(作曲:日向敏文)への参加が、プロ・ギタリストとしてのデビュー。ギター1本でロックやポップスの名曲を演奏したCD付き楽譜集「ソロ・ギターのしらべ」シリーズ(リットー・ミュージック刊)が累計40万部を突破(2015年現在)し、楽譜としては異例のベストセラーを続けている。 2017年11月21日 電子版第一版発行 デザイン -------- ifni visual works イラスト -------- 村田なつか 発行 -------- Big South Valley Music mail@bsvmusic.com 著者 -------- 南澤大介 web site -------- http://www.bsvmusic.com/ twitter -------- @bsvmusic Facebook -------- http://www.facebook.com/DaisukeMinamizawa3/ YouTube -------- http://www.youtube.com/DaisukeMinamizawa -------- http://www.youtube.com/DaisukeMinamizawa2 -------- http://www.youtube.com/DaisukeMinamizawa3 Special thanks to :熊谷和樹、京風子(あんずもじ) 複写・複製・転載等厳禁