PS2 「はっぴいえんど」サウンドトラック制作記(1999.1〜2)


●はじめに

 99年2月18日〜23日に、池袋シアター・グリーンで上演される、劇団インターセプト、演劇レーベルBo-tanz、Play Box Project SANTA3の合同公演(オムニバス3本立て)のうち、第三話(題未定、作・演出…坪田直也)のサウンドトラックの制作記。複数劇団の合同公演というのはよくありますが、今回は役者もシャッフル。第三話出演者のうち、サンタサンタサンタの役者さんは3人(池上さん、Sundaveさん、藤崎さん)だけです。上演時間は40分程度づつの予定。(99.01.25)

●99.01.25(月)

 坪田氏と初の打ち合わせ。当初はメインテーマだけ作曲する予定だったが、やはり他にも音楽が欲しいということになり、結局メインテーマ+少々、ということに。時間も予算も限られているので、ピアノだけで作ろうかという話になる。台本を読みながら、メインテーマのイメージをねる。

●99.01.28(木)

 「メインテーマ」のラフスケッチが出来たので、坪田氏と打ち合わせする。風邪で大変辛そうである。このラフスケッチは人物や情感を感じすぎるということで、少し手を入れて「貧乏神のテーマ」として使うことに。で、「メインテーマ」は物語の中心となる「絵」のテーマでもあるので、もう少し静的なものにすることに。他、「阿呂亜のテーマ」はその場で「こんな感じですか?」と弾いたものでOKだったので、それを整えて使うことに。

 今回は全曲ピアノソロなので、せっかくの機会だからと少しピアノソナタなどで構造的な勉強をしてみることにする。

●99.02.01(月)

 今日はちょっと勉強。楽譜を所有しているピアノソロの曲を、譜面を見ながら聞き、左手や右手の音域など、構造的な部分を見ていくことにする。
 私はそもそもギタリストで(最近はほとんど弾いてないけど)、幼少の折りよりピアノを習っていたということもなく、だいたい鍵盤を多少弾けるようになったのは20歳以降のことである。しかも家にはピアノがなく、「ピアノ曲において適正な伴奏の音域」というものを解っていない節があったので、ちょっとそのあたりをかじってみているというわけである。

 てはじめに今日はジョージ・ウィンストンの「ディセンバー」。改めて聞き直すと静謐な音使いに感銘を受ける。この人もメチャウマなピアニストではないのだが、フリーに弾いてもメロディアスになる所なんかがけっこう自分に近いものを感じる。意外と左手は中音域のものが多かった。

 つづいて再度「メインテーマ」のラフをつくる。感情の動きではなく、ただそこにある「絵」を音にするというのは難しい。さらに「そこにある」だけではなく、エンディングなどである種の「感動」をも含ませなければならない。とりあえずラフスケッチ#4をとっておくことに。

●99.02.04(木)

 結局ラフスケッチを#8までつくり、夕方坪田氏と打ち合わせ。そのなかから使えそうなものが見つかり、ひとまずホッとする。

 中心となる曲は「M1 main title」、「M2 happy」、「M3 sad」、「M4 貧乏神」の4曲で、あとはそのアレンジヴァージョンということになる。全部ピアノソロの予定なので、どこで差違を作っていくかが難しい。とりあえずできるだけ今週中に作曲作業を終え、そのあと清書するという手順で行くことに。

●99.02.06(土)

 作曲作業は一応終了。清書に入る。もっとも清書中に変更もあるとは思うが、一応予定通りの進行でちょっと安心。

 サントラとしては今回曲数が少ないので、「Piano Solos 2」として何曲か追加してリリースすることに。「Piano Solos」は哀しい曲調のものを中心にしたが、今回は優しく明るめの曲調のものを収録する予定。その、他の曲の選定作業と録音も平行して行うことにする。「はっぴいえんど」サントラの〆切は次の金曜である。

●99.02.08(月)

 「はっぴいえんど」サントラ以外のアルバム収録曲を選定。以前日本テレビのNeo Hyper Kids用に書いた「赤いふうせん」、劇団キャプテン・チンパンジー公演「ジャンヌ・ダルク」メインテーマのピアノ・ヴァージョン、劇団てぃんか〜べる公演「龍は眠る」メインテーマのピアノ・ヴァージョン、「Sol, Vento, e Mar」収録の「Summer Passes On」のピアノ・ヴァージョン、それと「愚かなる妻」用に書いた曲で、「Piano Solo」に未収録の「街」「テラス」、これらに手を加えて収録することを一応決定。

 夜坪田氏から連絡があり、公演でもCD販売が可能、とのこと。とすると、CD自体の制作〆切を公演日程に合わせることになるので、少しスケジュール的にハードになってしまう。でもまあ折角だし、なんとか間に合わせたいものである。

●99.02.09(火)

 朝5時起床、サントラ曲の清書作業。昼に坪田氏と打ち合わせ、曲のだいたいの尺が決まる。出来ている状態の曲を坪田氏が持ってきたMDにダビングして(私はMDは使わない)、実際の稽古で流して様子を見ることに。

 その後また清書作業。午後2時半現在で、あとはメインテーマを残すのみとなった。今回は進行が早くてちょっと嬉しい。CDをさくさく作らねば。

●99.02.13(土)

 他の仕事を間に挟みつつ、レコーディングは終了。12日夜から13日の朝にかけて、芝居で使うヴァージョンとCD用のヴァージョンをDATに落とす作業(ミックスダウン)。今回はピアノだけなので、余分なミキサーを一つ外し、極力余計な回路を通らないようにする。終了は13日午前5時。芝居用の曲は今回は特別にCDに焼いて坪田氏に13日の昼に渡す予定になっているので、その後すぐにデータの切り出しとCDを焼く作業にかかる。午前中に仮眠して昼過ぎに起きたらまたちょっと風邪気味。芝居用CDは打ち合わせに間にあって一安心である。この後の予定はCD用の曲のデータの切り出しとテスト焼き、調整、デュプリケート(プリント)。ここまでを月曜日に終らせるつもり。

 2月8日に記した曲以外に、「NEKO」のメインテーマ、「VOYAGER」のメインテーマのピアノ・ヴァージョンも収録する事にする。

●99.02.14(日)

 前日寝る前に薬を飲んだので、体調は楽になる。ノイズをとったりCD用にレベルをそろえたり曲順を決めたりの作業がなんとか終わり、テスト焼き。今回は一発でうまくいったので、デュプリケート(プリント)作業にかかる。今回は進行が早くてちょっと嬉しい。

 これからデュプリケートしつつジャケット、インナーのデザイン作業。完成予定は(一応)木曜日。

●99.02.15(月)

 結局プリンタを購入し、ジャケットやインナースリーブのアートワーク作業。エプソンのPM-770Cという機種を買ったのだが、写真のプリント画質が異様にキレイで驚く。そのため写真を配した裏ジャケットが完成した時点で、表ジャケットの予定を変更。故マイケル・ヘッジスの「Breakfast in the Field」というアルバムのジャケットのレイアウトを利用し、オマージュにする。

●あとがき

 かくして、一枚のCDは出来上がるのであった。

 収録曲のうち既発売分をそのまま収録したのは「NEKO(エンドタイトル)」のみで、「龍は眠る(プロローグ)」はリマスタリングしており、「Summer Passes On」「Voyager」はこのアルバム用にピアノ・ソロに編曲。また「ジャンヌ・ダルク」は公演当時のサウンドトラック(カセット、廃盤)のピアノ・ヴァージョンに若干手を加えている。

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